ファイナンスカンパニーがシステム開発内製化

IT初心者から「かなりエンジニア」になるまで

1951年の設立から、今年で70年を迎えたファイナンス・カンパニーのクレディセゾン。昨今のデジタル技術の進展により、急速に変化していくビジネス環境に追随するべく、デジタル人材の確保と育成に乗り出しました。特に顧客接点頻度の高い業務について内製化・自社開発ができるようになるには、外部からエキスパートを採用するだけでなく、社内でもエキスパートを育てる必要があります。

クレディセゾンとカサレアルはスキルチェンジ研修を行い、それぞれの事業におけるエキスパートを、エンジニアリング業務でもエキスパートにする取り組みを進めました。

スキルチェンジ研修 担当者

デジタルイノベーション事業部
テクノロジーセンター
藤野 丈二 さん
デジタルイノベーション事業部
テクノロジーセンター
長谷 真一 さん

IT初心者12名がエンジニアリングチームに加入 ー はじめの一歩を揃えたい

6名のエンジニアはベンチャー系が2名、エンタープライズ系が4名で、スピード感と安定感の双方を重視しながら従事する、いわゆるバイモーダルなチームでした。今回の研修の担当者である藤野さん、長谷さんも、この募集を機にクレディセゾンに入社したお2人です。

こうして結成されたチームで、新規の戦略的企画は自社開発で進められてきましたが、事業部門のシステムは依然として外部委託の状態にありました。小野さんは、 外部委託することによって発生する企業間の層と膨大なマネジメント業務がエンジニアリング業務を逼迫し、「使う人に喜んでもらう」という本来の目的にフォーカスできなくなることを危惧されていました。そして2020年9月、この問題と向き合い、事業とエンジニアリングの距離を極限まで縮めるため、新たにチームメンバーを集めることにしたのです。「プログラミングをしたい人」を必須条件に置き、全国に募集を掛けました。結果、様々なバックグラウンドを持つ12名が新たにテクノロジーセンターに配属されることとなりました。この12名はコールセンター、与信審査、営業など、それぞれのビジネス領域について熟知しているエキスパートではありましたが、システム開発については未経験者でした。そのため、まずはエンジニアとしての知識と技術を身に着ける必要がありました。


「新たなメンバーを公募したときには、内製で教育するつもりでいた。」と、本研修の担当者である藤野さんは言います。しかし、「すぐに無理だろう、となった。私たちの業務も外せないし、カリキュラムも決まっていなかった。事務所の移転もあったので、予定していた時期に受講が間に合わない可能性さえあった。社内メンバーによる育成は難しいことではないが、何もない状態から内製に向けて頑張るのは限界があった。」と続けました。

今回、新たにメンバーとなる12名がエンジニアとして歩み出すためには、第一歩目のベースを揃えるということが重要でした。しかしながら前述の通り、既存のチームメンバーは2名がベンチャー系、4名がエンタープライズ系と経験が分かれていたため、誰が講師となって教えるかによって内容にバラつきが出てしまうのでは?という声も挙がったといいます。

そこで、最初のエンジニア教育は研修ベンダーに委託することにしたのです。

前職の研修から印象に残っていたカサレアル

数ある研修ベンダーの中から、なぜカサレアルを選んでくださったのでしょうか。その理由は、本研修の担当者である長谷さんがクレディセゾンに入社する前まで遡ります。長谷さんが以前勤めていた会社でもカサレアルの研修を導入いただいていたのです。

私は最初、「研修会社なんてどこでも一緒かな」と思っていました。後輩が過去に受けてきた研修を見ても、「こんな技術やらせるの?」という、現実の業務とは離れているものが多くて。だから長谷とは、「そうじゃないのがいいよね」と話していたんです。すると長谷から「カサレアルがいい」と提案がありました。

藤野さん

前の職場のことですが、カサレアルは質の高い研修をしてくれたことが印象に残っていました。無茶なお願いにも柔軟に対応していただいて、講義が多そうなところに受講者同士のディスカッションを入れてもらったり、このテーマは厚めにやってほしいとか、受講者の様子を見て柔軟に進捗を調整してもらったりしていました。

長谷さん

カサレアルは実践的な研修をやっていて、カスタマイズの部分でも融通が利くところがあって、そこを評価して決めました。それから、研修の企画は普段、人事部が担当しているのですが、今回は我々のようなエンジニアに委ねてくれたのも大きかったです。意見出しした上で企画ができたし、カサレアルが相談に乗ってくれる前提もあったし、クレディセゾンの文化も良かったんだと思います。

藤野さん

カサレアルの提案

▼スキルチェンジ研修

 1.クライアントサイド編(9日間)

  ITリテラシー、HTML/CSS、JavaScript、jQueryの学習

 2.Java編(13日間)

  Javaの基本的な文法からDB操作、テストまでを学習

 3.サーバサイド編(4日間)

  Spring Bootの利用と総合演習

カサレアルは今回、 スキルチェンジ研修と題してカリキュラムを設計しました。受講者はそれぞれのビジネス領域でのエキスパートではありますが、いわゆる理系ではなく、エンジニアリング経験のない12名でした。本研修では、①JavaScript + RESTful Webサービス、および②サーバーサイドでのHTML出力、において設計・実装・テストができるようになることを目指します。また、初学者であっても新入社員ではないため、週に1日、自習/復習の日を設け、自分たちで理解度の確認、振り返りを行えるようにしました。

カサレアルの提案を見たとき、どのように思いましたか?

個人的には、カサレアルどうこうではなくて、受講者が12名もいるので、脱落者が出てもおかしくないと思っていました。得意不得意もありますし。ただ、カサレアルが研修してくれることに対しての不安はありませんでした。普通は任せてしまうと、主導権を握られるのが通例なんですが、こちらの意見もちゃんと聞いてもらえました。

これは長期間に渡る研修だし、受講者からすると未経験の領域に入ります。カサレアルは学校という位置付けで、受講者は生徒であり、私や長谷は彼らの親みたいなものです。私たちとしては、「学校ではどこまでやってくれるの?どんなフォローしてるの?」という疑問はありましたし、受講者からは「こんなに勉強させてもらっていいんだろうか」っていう声もありましたし、同時に「これでできなかったらどうしよう」というプレッシャーもあったみたいです。社内からこの研修に対する期待も大きかったですよ。

藤野さん

このチームは、ベンチャー出身もいますし、SIer出身もいますし、バイモーダル戦略のモード1とモード2の人材が混在しています(※)。また、内製に切り替えたい既存の社内システムが多くあったので即戦力が必要でした。そこをうまく、「Javaなんだけど割とモダンで」っていう注文ができたのがよかったです。広く浸透してて、かつこれからも使えるものなので。

長谷さん

実施カリキュラム

2020年11月9日~12月23日(計26日間、毎週金曜日は自習日)

クライアントサイド編 IT基礎 1日間
Git入門 1日間
初歩から学ぶHTML5/CSS3入門 1日間
JavaScriptで学ぶ初めてのプログラミング 1.5日間
jQueryによるAjaxアプリケーション開発 3.5日間
総合演習① 1日間
Java編 Javaプログラミング入門 + ドリル 4日間
Javaプログラミング基礎 + ドリル 5日間
データベース入門 2日間
JUnitによるテスト入門 2日間
サーバサイド編 基礎からのSpring BootによるWebアプリケーション開発 3日間
総合演習② 1日間

長谷さんはカサレアルを以前からご存知でしたが、藤野さんはカサレアルの研修は初めてでしたよね。カリキュラムを見ていかがでしたか?

はい、本当は最初、ずっと張り付いて研修を見てようかなとも思ってたんです。このへん(の説明が)怪しいんじゃないか?ここの部分はやらないんじゃないか?ここどう説明するのかな?とかがありそうで。だけど、そういう隙がカリキュラム上に見当たらない。そんな隙がないから、安心して任せられました。

藤野さん

実施中の様子 ー 自習時間も積極的に活用していた受講者たち

新入社員ではないけれど、ITやプログラミングについては初学者である12名の受講者。彼らの様子はどうだったか、どのようにフォローされていたのかをうかがいました。

システム開発は全く初めて、という受講者は不安が大きかったかと思います。講義初日はどんな様子だったでしょうか?

人によりけりでしたね。初日のIT基礎って、リテラシーのベースになる部分で知っておくに越したことはないのですが、初めての人にとっては不安が助長されるものだったかもしれません。でもこういうのって、1周まわって見えてくるところもあるじゃないですか。だから不安がっている人には、「気にしなくていいよ」と声を掛けましたが、あまりフォローはしませんでした。多少、腕に自身がある人もいたんですが、一律で「これは大変だな」って気持ちを起こせたのが却ってよかったです。調子に乗らずにほどよく引き締められたのではと思います。教科書として使っていた基本情報処理技術者試験の対策本は、事前に貸してほしいと申し出てきた人もいたので、あらかじめ配布しておいて、輪読とかしてもよかったかもしれません。

長谷さん

その後、受講者は順調に知識と技術を習得し、週に1回の自習日も積極的に活用していきました。自習日は自発的に声を掛け合って集まり、受講者同士で相談しながら疑問点を解消していったといいます。藤野さん、長谷さんも研修の担当者ではありますが、自身もエンジニアであることから、受講者からの質問に答えたり、講義の補足をしていたりしたそうです。

スキルチェンジ研修を終えて

26日間のスキルチェンジ研修を終えて、お2人に率直な感想をうかがいました。

実施してみて、期待以上だったこと、想定外だったことはありますか?

研修内容とは逸れますが、毎週、受講者の理解度状況や様子をフィードバックしてくれる場を設けてくれたのがよかったです。振り返りを一緒にやらせていただいたのが新鮮でしたね。何をやったかのイチゼロの話ではなく、その間を連携してくれて、消化不良がないようにコミュニケーションできたと思います。

そもそもこういう、かゆいところに手が届く研修をしてくれること自体が想定外でした。始まる前に抱いていた期待がまるごと100点になったいう感じです。”期待どおり”っていうのがすごいんじゃないでしょうか。受講して、帰ってきて、何もできないっていう研修もザラにありますしね。カリキュラムを精査させてくれたことも、カリキュラムの作り方も期待以上でした。

藤野さん

当初は内製での実施を検討されていましたが、「カサレアルに任せてよかった」と思うところはありますか?

このチームは、バイモーダル戦略のモード1とモード2の人材が混在しています。長谷のチームのメンバーはモード1、私のチームのメンバーはモード2。この研修を私たち全員揃って指導したとしたら、指導役によって、受講者の知識や考え方が相当バラついたと思いますね。脱落者も出てたと思います。それがカリキュラムがよかったのもあるし、金曜日を研修なしの自習日にしていただいたのもあるし、みんながそれぞれカバーし合いながら、1人の脱落者なく終えられた。そして彼らは今もやっていけています。

私たちのチームに優秀なエンジニアは揃っているんですが、1人で全部やるのはキツい。何しろ準備がキツい。準備だけで、研修日程の1.5倍は掛かりますから、自力でやろうとしてたらすぐには始められなかったでしょう。また、連日での研修は厳しいので、1日やって1日休む、とかいう運営になって、想定の倍の日数が掛かってたかもしれません。そこを短期間に圧縮できたのがよかったです。

藤野さん

研修終えた受講者の現在を見て、何か思うことはありますか?

この研修が終了して約4ヶ月が経ちました。当初は脱落者が出ないか不安でしたが、今、受講者は”かなりエンジニア” です。研修でやってないことも取り組んでたりするので、この研修はエンジニアの入口として良い研修でした。みんな最初は不安で、武器を持ってない状態で、それが徐々に武器を握らされるようになって、そんなところから自分で武器を選び出して使えるようになりました。そういうマインドってなかなか醸成されないのに、それについていけてるんです。時間的にもタイトだったし、詰め込んだ部分はありましたが、良い研修でした。

研修期間中のインプット量には限界があります。講義の中でも自分で調べることを要所要所で発信していました。今回のカリキュラムは新人向けの内容でしたが、「Javaができるようになる」ではなく、「これから先、活躍できるエンジニアになる」ように育てることがミッションでした。自身でキャッチアップできる力がつくように、そういう発信を受講者が受け止めてくれたのが嬉しかったです。

長谷さん

受講者の活躍と広がる取り組み

事業戦略とITの一体化、事業部門の技術支援、事業とエンジニアリングの距離を極限まで縮めることを掲げて前進するクレディセゾン。藤野さん、長谷さんに今後の展望についてうかがいました。

エンジニアの採用拡大とか、定期的に各部門から異動を募ったりとか、こういうことが第二弾、第三弾と続くことは十分ありえるでしょう。今回のチームづくりは会社的に大規模な試みで応募数も多かったんですが、募集自体を知らなかった人もいました。今はまだ具体的ではないのですが、研修を受けた人たちが活躍する事実があればもっと広がるはずです。新卒でエンジニア職を採用する案も出てきているので、彼らと一緒に会社の文化を作っていければとも思っています。

藤野さん

カサレアルの研修を終えて、社内でも開発研修を2ヶ月やってきて、適当な題材を選んで取り組みを続けていました。それが発展して、社内でも使えそうなモノになり、役員の前でもデモをして、これから正式にリリースしていく話になりそうなんです。12名は普段から業務に触れてきた人なので、何が良い、何が悪い、みたいなのを積んできているんです。それが形になったんだと思います。今はまだ助走期間ですが、これからも結果が出てくるでしょう。

長谷さん

受講者からの声

プログラミングの答えはひとつじゃない。これからたくさんのプログラムを見て、誰でもわかりやすい、使いやすいプログラミングを作っていきたいです
gitがどういうものかも知らなかったが、概念を学ぶことができた
講師の先生が、大切なところは繰り返して説明してくださって、聞き逃すことなくしっかり理解することができました
習得すべきことが多数あることに改めて気づきました
研修を進めるごとに、過去の演習問題とのつながりを感じることができた
フレームワークは便利だが、仕組みを理解しておかないとどういう動きをしているのかわからないため、少し怖いなと感じました
Spring Bootのところは演習部分が少なく、定着に不安があったので、最後に演習をいただけてありがたかったです
研修で学んだことを開発現場で活かせるようにするためには、実装を続けて場数を踏む必要があると思いました。ありがとうございました

カサレアル担当者からの声

クライアントサイド編
初日はMacの操作もおぼつかないレベルだった方も、3日目あたりからは慣れてきていました。順応が早い方が多かったと思います。ブレイクアウトルームを使った復習の時間も、皆さん積極的で、お互いに理解度を深めていました。質問も、ブレイクアウトルームや、講義中、講義後の質問タイムなどでも活発にあり、受講生の積極性が顕著にあらわれていました。ある受講者は前半はかなり苦労していましたが、後半からの成長がめざましく、最終的にはリーダーシップをとって教え役になっていました。
Java編
Javaプログラミングではグループワークで演習に取り組み、プログラムの挙動を確認しながら受講者同士でディスカッションを重ね知識を定着させている様子が見られました。データベース入門からそれまで発言が控えめだった受講者が積極的に発言するようになり、より議論が活発になりました。JavaScriptとJavaの違いに戸惑い、勘違いも見られる受講者もいましたが、後半では正確な情報をアウトプットできるようになり、積極的に議論をしていました。
サーバサイド編
Webブラウザとサーバを跨いだ時のデータの流れを掴むことに苦労している様子でした。Webアプリケーションの概要やSpring MVCで開発者が作成すべき部分とフレームワークによって隠蔽されている部分をしっかりと補足する時間を設けました。その甲斐あってか講義後半ではリクエスト/レスポンスを意識し、データの流れを把握できるようになりました。実践的な内容の質問をされる受講者もいて、プログラミングだけでなくシステム全体の構成をきちんと意識されている様子でした。

顧客プロフィール

株式会社クレディセゾン

設立:1951年5月1日

資本金:759億29百万円

純収益:2,826億円(2020年度実績)

事業利益:483億円(2020年度実績)

従業員数:4,319名(2021年3月31日現在)